小林公夫の「愛(め)でたいモノたち」

作家で法学者である、ハカセ小林公夫が好きな服や、小物、本、好きなお店、料理など様々な好きなモノについて語るページです。

ゾウと1秒はどちらが大きいか

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幻冬舎ゴールドオンラインに公開された記事「『ゾウと1秒はどちらが大きいか』あなたはどう答える」、はかなり多くの方に読まれたようです。失礼ながら、別の巨大なサイトならば、100万PVはいったかもしれません。東大入試英語に引用された英文の著者は、英文の中で、概略「異質なもの同士の比較の際に、我々は本能的に同質な類型の中での平均値と結び付けてその判断をなす」と述べています。だから、ゾウと1秒の比較の際には、動物界の平均値とゾウを比べ、時間の単位の平均値と1秒を比べるわけです。結果として、ゾウは平均値よりはるかに大きいので、ゾウが大きいと多くの人は答えることになる。それに対して記事のコメントに何本か目を通しましたところ、その中に面白いコメントがありました。それは太陽系の衛星という類型での話です。火星の衛星ファボスはどう評価されるかというのです。ファボスの直径は11km、地球の衛星である月は1740km、木星の衛星イオは1820kmです。つまり、太陽系の衛星という類型で比較した場合、木星の衛星にはかなり小さいものが多くありますが、平均値を考慮すると、ファボスは平均値より小さいのではないかというわけです。その場合、ファボスと1秒を比較して、ファボスと答えるであろうかというのが論者の主張です。こういう考え方は重要と思いました。しかし、この比較の話は地球上でのことと限局すれば、ファボスの話は持ち出せません。つまり、英文の著者は少々言葉足らずでした。英文のどこかに、あるものとあるものの比較の話は、「この地球上での話ですが」、と断り書きを入れるべきでした。そうでないと、宇宙の中での銀河の比較や、M天体の大きさの比較なんて話になってしまう。これでは話が広いがり過ぎてしまいますね。